2021年06月24日

次世代型プリンテッドエレクトロニクスを可能にする導電性ポリマーインクを開発

2021/06/19 fabcross

スウェーデンのリンショーピング大学の研究チームが、高い安定性と高い導電性を有するn型導電性ポリマーインクを開発した。空気中および高温における安定性が高く、表面にスプレーするだけで蒸着でき、フレキシブルで軽量な有機エレクトロニクスデバイスを簡単かつ安価に製造することが可能になる。商品化が先行している水分散性p型導電性ポリマーと組み合わせることにより、インクスプレーをベースとした革新的なプリンテッドエレクトロニクスの発展に寄与すると期待される。研究成果が、2021年4月21日の『Nature Communications』誌に論文公開されている。

導電性ポリマーは、有機系バイオセンサーや太陽電池、発光ダイオード、トランジスタ、バッテリーなどの分野で、フレキシブルで軽量な電子部品の開発を可能にしてきた。シリコンなど無機系半導体と同様、様々なドーピング分子を加えることでその電気的性質を調節できるため、ドーピング分子の種類に従って、電子の移動によるn型導電体および正孔の移動によるp型導電体が考案されてきた。

一般的に使用されている導電性ポリマーに、ポリ(4-スチレンスルホン酸)をドーピングしたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)のp型導電体PEDOT:PSSがある。PEDOT:PSSは、高い導電性と透明性、優れた耐熱性と安定性を有し、帯電防止剤や固体電解コンデンサ、有機ELや有機太陽電池のホール注入/輸送層などに実用化されている。特に注目されている特性として、水にコロイド分散可能な水分散性を有することから、将来的なプリンテッドエレクトロニクスへの応用が期待されている。しかしながら、多くのエレクトロニクスデバイスには、p型とn型の両方の機能の組合せが必要であるが、PEDOT:PSSに匹敵する導電性を有するn型ポリマーはこれまで実現されていなかった。

研究チームは、アメリカと韓国の研究者と共同で、空気中および高温で安定な高導電性n型ポリマーインクの開発に成功した。近年開発されたポリ(ベンゾイミダゾベンゾフェナントロリン)BBLに、ポリ(エチレンイミン)PEIをドーピングしたもの(BBL:PEI)である。BBL:PEIは、エタノールを溶媒としたインク状で供給され、表面にスプレーするだけで蒸着でき、BBL:PEI薄膜は8 S/cmの高い導電率を発揮することが分かった。

研究チームは、「次世代のプリンテッドエレクトロニクスを可能にする重要な進歩だ。様々な用途に適用するにあたっては課題も残っているが、量産の可能性が高いので実用化は遠くない」と、期待している。
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2021年06月23日

有機CMOSイメージセンサ市場、2028年に28億7000万ドル

June, 18, 2021, Laser Focus World

San Francisco--Allied Market Researchのレポート、「有機CMOSイメージセンサ市場、画像処理、アレイタイプ、アプリケーション、業種、2021〜2028、グローバル機会分析と業界予測」によると、市場規模は、2020年に11億9000万ドル、予測期間にCAGR 12.4%で成長して、2028年に28億7000万ドルに達する見込である。北米が、予測期間に世界市場への主要貢献者、これにヨーロッパ、APACが続いている。

有機CMOSイメージセンサ世界市場は、大きな潜在性があり、新たな技術革新とアップグレードを経験している。イメージセンサ市場のプレイヤは、高分解能画像達成のための技術改善に取り組んでいる。これが、有機CMOSイメージセンサにつながり、画像歪のない8K解像度をサポートする。

世界の有機CMOSイメージセンサ市場シェアは、予測期間に大きく成長する見込である。画像品質や優れたカラーコントランスなど、有機CMOSイメージセンサが提供する要素が、世界市場拡大を後押しする。加えて、グローバルシャッタ技術などの技術の導入が有機CMOSイメージンセンサの採用を後押しすると予測されている。しかし、有機センサは、市販のイメージセンサと比べるとバッテリの枯渇が速いので、これは有機CMOSイメージセンサ市場の成長を阻害する。逆に、より広いアプリケーション、高速で安価な処理法の高い信頼度が、将来、市場の成長を後押しすると見られている。

さらに、発展途上諸国で、有機CMOSイメージセンサ製品の浸透度が高くなりそうである。特にコンシューマエレクトロニクスセグメントである。世界中で、8K解像度やグローバルシャッタが技術を含め、急激な技術導入が、有機CMOSイメージセンサ市場の成長を後押しする。

世界の有機CMOSイメージセンサ市場シェアは、画像処理、アレイタイプ、アプリケーション、業種および地域に基づいて分けられている。画像処理では、市場は、2Dセンサと3Dセンサに二分されている。アレイタイプでは、市場はリニアイメージセンサとエリアイメージセンサに分類されている。アプリケーションベースでは、市場は、3Dイメージング、ビデオ、マシンビジョン、バイオメトリクスなどに分けられている。業種では、市場は、コンシューマエレクトロニクス、自動車や、医療&ライフサイエンス、セキュリティ&監視、ロボット工学などに分けられている。

地域的には、有機CMOSイメージセンサ市場のトレンドは、北米、ヨーロッパ、APAC、LAMEAで分析されている。北米が、2020年、最大の収益貢献者だった。しかし、2020-2028年、APACの有機CMOSイメージセンサ産業が、他の地域と比較して成長が速いと予測されている。これは、インド、中国、日本、韓国などの経済圏からの需要が増えているためである。

調査の要点
・コンシューマエレクトロニクスセグメントが、予測期間で主要な業種、これに自動車が続く。8K解像度やグローバルシャッタ技術などの技術に対する需要増が、今後の製品需要を押し上げると見られている。
・APACと北米を合わせると、2020年結城CMOSイメージセンサ市場シェアの60%以上を占めた。
・インドは、予測期間に最高成長率が見込まれている。
・USは、北米市場における主要なシェアホールダであり、2020年のシェアは、約57%だった。

主要プレイヤは、ams AG, Canon Inc, Fujifilm Holdings Corporation, NikkoIA SAS, OmniVision Technologies, Inc., Panasonic Corporation, Samsung Electronics Co. Ltd., Siemens AG, Sony Corporation, and Xenics nv.
(詳細は、https://www.alliedmarketresearch.com/)
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プリンタブル有機デバイスで視覚を回復

June, 18, 2021, Laser Focus World

Sydney--シドニー大学のエンジニアは、ローコストの3Dプリント電気デバイスを開発している。これは、吸収された光を使い、ニューロンを発火させ、眼からの信号を脳に送る。つまり、視覚を失った人々の人工網膜として機能する。

Dr Matthew Griffithは、多色カーボンベース半導体から電気デバイスを作製した。これは、眼から脳に信号を送るニューロンを発火させるために、吸収した光を利用する、視力を失った人々の人工網膜として機能する。

網膜は、眼の奥を埋め尽くす薄い組織層であり、光を受けてそれを神経信号に変換し、これらの信号を処理のために脳に送る。

「世界で、視覚障害の人の数は、少なくとも22億人。われわれの研究の目的は、網膜色素変性や加齢黄斑変成(AMD)で失明を経験している人々に生体医学ソリューションを提供することである。AMDは、世界的に、失明の主因の1つである」とDr Griffithは話している。

同氏は、最終的にこの技術、一種の神経インタフェースを適用して、脊髄損傷の人々の感覚機能を回復し、神経変性疾患の人々を処置しようと考えている。神経インタフェースは、個々人の神経系と相互作用して活動を記録、刺激するデバイスである。

「他の機能の中で、ニューロンは身体の信号導体である。失われたニューロンリンク、例えば脊髄損傷が原因で失われたニューロン機能は、深刻な問題となる。ニューロンが発火しないと、それも弱体化する、これは失明や難聴の原因となり、パーキンソン病や癲癇のような病気の原因となる」と同氏は話している。

神経インタフェースは、これらの神経細胞の分裂を埋めるか、失火の場合、ニューロンを再プログラムする」。

Dr Griffithのデバイスは、新聞印刷と同じ低コストな方法、高速R2Rでプリント可能である。

「同じような技術が積極的に開発されているが、われわれのデバイスは、ヒトの細胞と同じ構成要素であるカーボンでできているという点で異なっている」。

他のデバイスは、硬くなりがちである。通常はシリコンあるいは金属製である。これらは、柔らかくて柔軟な人の身体への組込に問題がある。われわれのデバイスは、このような組織を考慮して設計されている」。

Dr Griffithは、NHMRC Ideas助成金を受け、シドニー大学、ニューカッスル大学の研究者とともに、そのプロジェクトに継続して取り組んで行く。

デバイスの機能の仕方
デバイスは、柔らかく、柔軟な表面に水ベースのインクでプリントされることが考慮されている。インクは、神経成長要素を含んでおり、次に外科医が患者の網膜に挿入する。

関連のニューロンがそれに再結合されると、網膜は、光刺激を受けて失われた機能を取り戻す。この段階で、Dr Griffithのチームは、マウスの脊髄と眼からとったニューロンを使って実験を行った。

初期の実験は、ペトリディッシュの半導体にマウスの神経細胞の成長を調べた、次にニューロンの電気活動がテストされた。

「これらの細胞が生存しているだけでなく、それらは成長し、神経機能を維持した」とDr Griffithは話している。

「次のステップは、ナノパタンをプリントすること、それらが成長する場所をコントロールすることである。これは将来、われわれが、脊髄あるしは網膜など特定の身体箇所に、それらを直接成長させられるということである」。

類似の視覚回復技術との違い
類似の技術が、視覚を回復するために眼と脳の両方を復元しようとしている。しかし、この方法は、より洗練されたアプローチを必要とする。

「患者は、ある程度の視覚を取り戻す、これは、失明していた人々にとっては間違いなく人生を変える。しかし、想定する高忠実なビジョンではない。現在の最先端の技術は、黒白の大きなぼやけた形状を生成する」とDr Griffithは言う。

もう1つの重要な違いは、Dr Griffithのデバイスが電気を必要としないことである。それは外部からの光で内的に電力を供給する。

「成功すれば、われわれのデバイスは21世紀の大きな科学的課題の1つを解決する方向への前進に寄与する。すなわち、人体の感覚ネットワークとコミュニケートできる。われわれは、光だけを使ってこれを実現したい。これによって未来の生体電子技術の実に素晴らしい展望が開ける」。

(詳細は、https://www.sydney.edu.au)
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2020年12月05日

有機デバイスのセラミックコーティング技術を開発

12/3(木) EE Times Japan

 リコーは2020年12月、有機デバイスの機能を保ちながら、耐久性を大幅に向上させることができる「セラミックコーティング技術」を開発したと発表した。

 有機ELや電子ペーパー、有機薄膜センサー、有機太陽電池など、さまざまな有機デバイスが登場している。有機分子を組み合わせることで、多様な機能を実現できる半面、無機デバイスに比べると強度が弱いなど課題もあった。

 そこで同社は、これまで培ってきた半導体材料技術と薄膜生産技術を活用し、有機デバイス上に電荷輸送性中間層塗料と透明導電性セラミック粉体を、常温でコーティングする技術を開発した。有機デバイス表面には事前に、独自の電荷輸送性中間層を塗布する。これは、有機デバイスの表面を保護し、セラミック粉体の密着性を高めるためである。

 そして「エアロゾルデポジッション法」と呼ばれる手法を用い、透明で導電性を持ったセラミックの微細粉末を、常温で固体のままデバイス表面に衝突させる。直径が100mm、長さ380mmという広い面積でも、セラミック膜を均一に形成できるという。成膜の工程ではセラミック粉体の組成やサイズ、噴射条件などを最適化した。

 開発したセラミックコーティング技術を用いると、ダイヤモンドと同じ結晶構造を持ったDLC(Diamond like Carbon)コーティングと同等かそれ以上の、極めて高い強度を実現することができるという。

 開発した技術を、同社の電子写真用感光体に適用して摩耗試験を行った。この結果、一般的な有機感光体に比べ約35倍、高耐久樹脂膜を用いた感光体と比べても約10倍の強度が得られることを確認した。なお、セラミックコーティングに用いる電荷輸送性中間層と透明導電性セラミック粉体は、目的に応じて調合を変えれば、さまざまな有機デバイスに対応することが可能である。

以下がプレスリリース

https://jp.ricoh.com/release/2020/1202_1
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2020年09月16日

インクジェットでプリントした薄型太陽パネル

September, 11, 2020, Laser Focus World Japan

Saudi Arabia--現在、太陽電池は、シャボン玉に載せることができるほど薄く、軽量、柔軟に作ることができる。効率的に光からエネルギーを取り出す新しい電池は、新しい電子デバイスに電力を供給する代替となる。例えば、従来のエネルギー源が不適切な、医療用スキンパッチである。

「ロボット用の電子スキン、飛行デバイス用のセンサ、病気を検出するバイオセンサの大変な開発は、全てエネルギー源関連で制約されている。大きなバッテリ、あるいは配電網に接続するよりも、われわれは軽量、超薄型有機太陽電池を利用して、屋内外で光からエネルギーを採ることを考えた」と研究リーダー、Derya Baranチームのポスドク、Eloïse Biharは説明している。

これまで、超薄型有機太陽電池は一般に、スピンコートか熱蒸着で作製された。これらは、拡張性がなく、デバイス形状が限られる。この技術は、透明で伝導性はあるが、脆弱で柔軟性がない材料、ITOを電極に利用する必要がある。こうした制約を克服するためにチームは、インクジェットプリンティングを適用した。「われわれは、太陽電池アーキテクチャの各層に機能インクを考案した」とPh.D学生、Daniel Corzoは話している。

ITOの代わりにチームは、透明、フレキシブル、導電性ポリマEDOT:PSS(3,4-エチレンジオキシチオフェン) ポリエスチレンスルボン酸をプリントした。電極層は、光取込有機光起電材料を挟んでいる。デバイス全体は、パリレン内に封止できる。フレキシブル、防水、生体適合保護コーティングである。

Corzoによると、インクジェトプリンティングは、拡張、ローコスト製造に非常に適しているが、機能インクの開発が課題だった。「インクジェットプリンティングには、それ独自の科学がある。カートリッジとインク内の分子間力に打ち勝ち、非常に小さなノズルから極めて微細な液滴を押し出す必要がある。インクが堆積されると溶剤も重要な役割を担う。乾燥挙動がフィルム品質に影響するからである」とCorzoは説明している。

デバイスの各層にインク成分を最適化した後、性能をテストするために太陽電池をガラスにプリントした。電力変換効率(PCE) 4.73%を達成し、完全プリント電池で以前の記録4.1%を上回った。研究チームは、超薄型フレキシブル基板に太陽電池をプリントできることを初めて示し、PCE 3.6%を達成した。

「われわれの成果は、新世代の多目的、超軽量プリント太陽電池の踏み台になる。これは、電源として使え、あるいは皮膚ベース、インプラント可能な医療デバイスに組み込める」とBiharは話している。

(詳細は、https://discovery.kaust.edu.sa)
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2020年08月27日

UNIST「有機半導体《イクセン》合成に成功」と発表

2020年8月27日 コリア・エレクトロニクス

UNIST(蔚山科学技術院)は26日、シリコン半導体に代わる有機半導体の研究が活発に行われる中、有機半導体材料である「イクセン(ixene)」を合成することに成功したと発表した。

今年で有機物「イクセン」の分子構造が明らかになって以来79年ぶりである。 UNIST(蔚山科学技術院)は、パク・ヨンシク、イ・グンシク、シン・ヒョンジュン教授の共同研究チームが、多環芳香炭化水素(Polycyclic Aromatic Hydrocarbon、PAHs)物質の一つであるイクセン分子を初めて合成することに成功したと明らかにした。

また、窒素とホウ素が添加(ドーピング)されたイクセンをさらに合成し、この物質の有機半導体材料としての可能性を示した。炭素をベースにした有機半導体は、商用化されたシリコン半導体材料とは異なり、柔軟で加工性に優れフレキシブル素子(device)に使うことができる。

代表的な有機半導体材料としては、炭素原子がいくつかの六角形の環状を成す「多環芳香炭化水素」が挙げられる。半導体材料内には自由に動くことができる電子が必要で多環芳香炭化水素は、分子内部に自由に動くことができる電子(delocalized electron)があるためである。

今回共同研究チームが合成したイクセンも「多環芳香炭化水素」の一種である。 1941年にイクセンという名前と一緒に、この分子の構造が提案されたが、当時知られていた方法では合成が難しく、実際に作る事はできなかった。研究チームは、ダイアセチレン(diacetylene)分子の「環化反応」とパラジウム触媒を使用した「炭素 – 水素アリル化反応」を利用してイクセンを合成することに成功した。

また同じ2段階合成法を用い、有機半導体材料として使用可能な「B2N2-ixene」分子を作り、この物質の性質を明らかにした。シン・ヒョンジュン、イ・グンシク教授の研究チームは、実際の実験と理論計算によってB2N2-ixene分子がイクセンと比べ、少ないエネルギーのギャップを有することを証明した。パク・ヨンシク教授は「イクセンという新しい物質を、現代有機化学を用いて合成したという点だけでなく、分子の特定の場所に、任意の物質を正確に添加することで、物理的性質を制御する方式を提案したという点で意義が大きい研究」と説明した。

彼は続いて「今回の研究で使用されたパラジウム触媒と炭素 – 水素アリル化反応は、より大きな分子サイズを有する多環芳香炭化水素を合成する戦略にも応用することができるだろう」と期待した。 UNIST自然科学部チェ・ウォニョン教授チームと、エネルギー及び化学工学部カン・ソクジュ教授チームが参加した今回の研究成果は、化学分野の権威誌である「アンゲバンテ・ケミー(Angewandte Chemie International Edition)」に8月24日付けで掲載された。
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2020年08月21日

ハイデルベルグ社、最先端印刷技術で新たな成長市場へ進出

2020年8月20日 印刷時報

 ハイデルベルグ社(ドイツ)は、このほどプリンテッドエレクトロニクス、および有機エレクトロニクスの市場育成、製造、販売のための専用ビジネスユニットを設立した。すでにウィスロッホ-ヴァルドルフ工場での生産を開始しており、印刷センサーの生産ラインに約500万ユーロを投資しており、ハイデルベルク市にあるイノベーションラボ社(iL)で歯科技術用に開発されたセンサーが、最初に印刷される製品となる。これらの革新的な印刷センサーにより、咬合時、つまり上顎と下顎が一緒になったときの咀嚼圧の分布をデジタルで記録できるようになり、また、タブレットでの3D視覚化とデータのアーカイブにより、不正咬合を特定し、その後修正することができるようになる。

 今後、ハイデルベルグ社では、社内のハイテクキャンパスにおいて、最先端の印刷技術を利用して、他のデジタルアプリケーション用のセンサー、とくにヘルスケアとロジスティクス、さらに小売および自動車セクター向けにも生産していく。

 ハイデルベルグ社のライナー・フンツドルファーCEOは、「プリンテッドエレクトロニクス、および有機エレクトロニクスの開発と工業生産に着手することは、ハイデルベルグにとって、そしてインダストリアルプレーヤーのドイツにとって画期的な出来事である。このようにハイテクセンサーの生産に関与することで、数千万から数億ユーロという単位の成長の可能性が開かれる」と語っている。
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2019年12月19日

ラップにも貼れる半導体開発、有機半導体を超薄膜に印刷して実現、東大など

BCNニュース 2019/12/17

 東京大学大学院新領域創成科学研究科、同マテリアルイノベーション研究センター、産総研・東大先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ、物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(WPI-MANA)の共同研究グループは12月17日、高性能な有機トランジスタに利用可能な有機半導体超薄膜をさまざまな表面にシールのように貼付する手法を開発したと発表した。

 有機半導体は、印刷法での製膜が可能であることから、低コストでの大量生産が可能な次世代の電子材料として期待されてきた。しかし、有機半導体薄膜を印刷法により製膜する際には、塗布下地の層として溶剤耐性や熱耐久性など、多くの性能が要求されていたため、実デバイスの作製にあたり制約が少なからず存在していた。

 今回、共同研究グループは、印刷法により製膜した有機半導体単結晶膜を水を用いて結晶性を維持したまま基板から剥離させ、厚さわずか分子数層分程度の厚みを有する超薄膜を作製することに成功した。この原理を用いることで、これまでの手法では印刷法と適合しなかった基板上に半導体膜を貼り付けることが可能となった。転写された半導体膜により作製された電界効果トランジスタは、平均の電荷の移動度として、実用化の指標となる10cm2/Vs以上を示すことを明らかにした。

 今回の手法では、従来では有機半導体塗布プロセスとの適合性の観点から実現が難しかった素子構造を簡便に作製可能となり、将来の産業応用に向けた高性能な有機半導体膜製造プロセスとしての利用が見込まれる。

 なお、この研究成果は、米国科学雑誌「Proceedings of theNational Academy of Sciences of the United States of America」19年12月16日版に掲載される。同研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金「単結晶有機半導体中電子伝導の巨大応力歪効果とフレキシブルメカノエレクトロニクス」「有機単結晶半導体を用いたスピントランジスタの実現」(研究者代表者:竹谷純一)、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(さきがけ)研究領域「微小エネルギーを利用した革新的な環境発電技術の創出」研究課題「有機半導体の構造制御技術による革新的熱電材料の創製」の一環として行われた。
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2019年07月09日

住友化学とフランスのイゾルグ、有機光ダイオードの開発で提携

July, 8, 2019,  Laser Focus World

東京--住友化学とイゾルグ社は、有機光ダイオード(OPD)を用いたスマートフォン用の指紋センサおよび有機CMOSイメージセンサ(有機CMOSセンサ)の開発において提携する契約を締結した。

 契約は、有機半導体材料の開発で世界をリードする住友化学と、OPD技術を用いたデバイスや大面積イメージセンサを世界に先駆けて開発したイゾルグ社が、2013年にスタートさせた協力関係をより深化させることを目的としたものである。住友化学は、指紋センサや有機CMOSセンサ用のOPD材料を製造し、イゾルグ社に供給するとともに、同社の生産技術とマーケティングについて支援する。イゾルグ社は、パネルメーカーの協力を得て、これらセンサの量産化を目指す。

 住友化学とイゾルグ社の提携により生み出される指紋センサは、軽量かつ薄膜で、塗布プロセスで製造できるため、大面積化が容易といった特長がある。大面積の指紋センサをスマートフォンの画面全体に組み込むことで、画面上のどの場所でも複数の指紋を検出・認証することが可能となり、利便性とセキュリティの向上が期待できる。また、有機CMOSセンサは、住友化学のOPD材料が通常の可視光だけではなく、高感度に近赤外線の検出も可能なため、近赤外線用の高性能なカメラにも応用できる。両社は、これらのセンサがセキュリティ、自動車、診断、家電用途などにおいても幅広く使用されるものと期待している。

 住友化学の副社長執行役員である上田博氏は、「イゾルグ社とのパートナーシップにより、これまで困難であったスマートフォンの全画面指紋認証や有機CMOSセンサの実用化に大きく前進する。当社は、新たな成長機会を捉えるべく材料の開発と工業化に取り組む」と語っている。
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2019年02月04日

旭化成 プリンテッドエレクトロニクス分野に参入

2019年2月4日 化学工業日報

 旭化成は印刷技術で電子デバイスを作るプリンテッドエレクトロニクス分野に参入する。電子ペーパーなど大画面のタッチセンサーなどに向く透明導電性フィルムを製品化し、他のデバイス開発も進める。見据えるのは、あらゆるモノがネットにつながるIoT環境とユーザーインターフェースの普及によりスマートフォンなどの携帯端末がなくてもインターネットにアクセス可能な「UnPad(アンパッド)」社会の到来。新たな素材やソリューションの提案で社会変革を促す。
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2019年02月01日

東ソー,短チャネル有機トランジスタ向けのプリンテッドエレクトロニクス材料を開発

〇2019年01月30日 Optronics

東ソーは,短チャネル有機トランジスタ向けプリンテッドエレクトロニクス材料(有機半導体,絶縁膜材,撥液バンク材,保護膜材)を開発した(ニュースリリース)。

有機半導体(TS5)は,溶解性と耐熱性をあわせ持ち,塗布で良好な結晶膜を形成し短チャネル有機トランジスタ(チャネル長5μm)で高移動度(1cm2/Vs以上)を発現するという。

絶縁膜材(DC100),撥液バンク材(BC400),保護膜材(DK500)はいずれも感光性を有し,低温・短時間硬化が可能であり,光パターニングにより微細な開口部を形成できるとしている。同社では,これまでに山形大学との共同研究において,有機ELディスプレーやセンサの試作・駆動実証に成功しているという。

開発した材料の主な特長は以下の通り。
・有機半導体 (TS5):高耐熱性(融点190℃),高溶解性(1.0wt%),5μmの短チャネル有機トランジスタで移動度1.0cm2/Vs以上
・保護膜材 (DK500):非フッ素系ポリマー,半導体層上に塗布・成膜が可能
・撥液バンク材 (BC400):光パターニングにより微細な開口部を形成可能(10μm角以下),有機半導体の塗り分けが可能
・絶縁膜材 (DC100):低温・短時間硬化(室温・1分以下(100mJ/cm2以下)),高絶縁耐性(4MV/cm以上),高平坦性(RMS0.3nm以下)
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2018年09月28日

Apple、「Apple Watch Series 4」にバッテリーの持続時間を延ばすLTPO TFTを採用

〇2018年 9月 27日 UBIリサーチ

Appleが現地時間9月12日、米カリフォルニア州にあるアップルパーク(Apple Park)内スティーブ・ジョブズ・シアター(Steve Jobs Theatre)で、以前より大きくなった画面にヘルスケア機能を強化したApple Watch Series 4を発表した。


Apple watch series 4 Source : Apple.com

Appleは今回の発表で、Apple Watch Series 4にLTPOという新しい技術を導入することで、電力効率を向上させたと明かし、注目を浴びた 。

LTPOはLow Temperature Polycrystalline Oxideの略語で、電荷移動度が優れたpoly-Siと低電力駆動が容易なIGZOの利点だけを活かしたTFTの一種である。LTPO TFTは漏れ電流が少なく、オン・オフの特性が良いため、消費電力は下がり、バッテリーの持続時間は延びる。


AppleのLTPO関連特許

また、AppleはApple Watch 4の本体サイズを40mmと44mmに拡大し、ベゼルを小さくすることで 前モデルに比べ、ディスプレイの表示エリアを35%と32%に広げており、画面解像度も44mmモデルは368×448ピクセル、40mmモデルは324×394ピクセルに増加したと説明した。Apple Watch 4のディスプレイはLG Display製のプラスチックOLEDで、最大輝度は1,000 nitである。

Apple Watch Series 4の価格は、GPSモデルは399米ドルから、セルラーモデルは499米ドルからとなる。予約注文は9月14日から受け付けを開始しており、発売は9月21日を予定している。
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2018年02月23日

フレキシブル有機プリンテッドエレクトロニクスの市場規模は2030年に2.6倍へ

2/22(木)

 富士キメラ総研は2018年2月5日、次世代エレクトロニクスとして注目されるフレキシブル、有機、プリンテッドエレクトロニクス関連の世界市場を調査し、その結果を発表した。中小型AMOLED(アクティブマトリックス式有機EL)が拡大をけん引し、2030年の市場規模は2017年比で2.6倍になると予測している。

 同調査では、フレキシブル、有機、プリンテッドエレクトロニクス関連製品18品目、プリンテッドエレクトロニクス関連材料11品目、有機EL関連材料5品目、基板3品目、印刷装置5品目を対象として現状を調査し、将来を予想した。

 調査結果によると、これら市場の2017年の市場規模は3兆3500億円と見込まれる。中小型AMOLEDの構成比が60%弱を占め、これは2030年でもほぼ同程度で、市場への影響が大きいとみている。また大型AMOLEDやタッチセンサーも規模が大きい。今後は、有機EL照明や導電性テキスタイルなどが伸びると予想。2030年の市場は8兆8600億円になると予測している。

 フィルム、紙、繊維などのフレキシブルな材料を用いるフレキシブルエレクトロニクスは、採用率は2017年の56.4%から2030年には67.5%に増えると予測。RFID、有機メモリなどは全量がフレキシブル製品となっている。2030年には中小型AMOLEDの86.4%がフレキシブル化、また電子ペーパーは48.3%、有機EL照明も96.7%とフレキシブル採用が進むと予測する。

 塗布・印刷技術を適用したプリンテッドエレクトロニクスでは、採用率は2017年の14.6%から2030年には20.5%に増えると予測。有機メモリ、有機イメージセンサーシートなどは全量がプリンテッド採用製品となっている。中小型AMOLEDのプリンテッド採用率が低いため採用は全体的に低率にとどまり、今後も全体の伸びを押し下げる。将来的にはセンサーデバイス、太陽電池などが伸びて採用率が上昇する。

 注目用途分野としては、ウェアラブル/ヘルスケア分野の機器や、流通・小売分野の高機能タグや在庫管理ツールなどの採用が増える見込み。ウェアラブル/ヘルスケア分野は、2017年の市場規模576億円に対して2030年は2550億円を予測。今後、肌に貼るタイプなどの生体電位センサーや、導電性テキスタイルなどが伸びるという。

 流通・小売分野では2017年の市場規模806億円に対し2030年予測は1500億円。タグの高機能化手段としての有機メモリや、圧力センサーシートの伸びを見込む。また、自動車分野では、2017年の市場規模91億円に対し2030年予測は4340億円と大幅増。今後、着座センサーなどの圧力検知に使用される圧力センサーシートなどの伸びが注目される。

 関連材料の世界市場では、現状は3Dプリンタ用造形材料、蒸着型有機EL発光材料、円偏光板などの構成比が大きい。今後、中小型AMOLEDや、フレキシブルガラスが伸び、将来的には、印刷材料として導電性ナノインクや有機半導体材料などの伸びが予想されるとしている。
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2018年02月21日

有機材料中での電子の拡散長が大幅伸長、有機太陽電池の性能向上に期待 - ミシガン大

2018/01/29 マイナビニュース 荒井聡

ミシガン大学の研究チームは、有機半導体中で光によって励起した電子と正孔が材料中を移動できる距離(拡散長)を大幅に伸ばすことに成功したと発表した。有機太陽電池に応用すると、デバイスの外部に電流を取り出しやすくなるため、発電性能の向上につながると考えられる。研究論文は、科学誌「Nature」に掲載された。

今回の研究でテストされた有機太陽電池セル(出所:ミシガン大学)今回の研究でテストされた有機太陽電池セル(出所:ミシガン大学)
有機太陽電池を含むほとんどの太陽電池は、p型・n型という2種類の半導体を接合したpn接合と呼ばれる構造を使って発電している。pn接合に光が当たると接合界面付近の電子が光のエネルギーによって励起し、電気を運ぶキャリアとなってn型半導体中を移動する。移動したキャリアの跡には正孔(電子の抜けがら)が残り、これもキャリアとなってp型半導体中を移動する。

電子と正孔のキャリアは移動中に出会って再結合したり、材料中に存在する欠陥につかまったりするので、材料中を移動できる距離は限られている。この移動距離を拡散長と呼ぶ。拡散長が短いと、光によって電子・正孔が励起しても、太陽電池セルの外部に電流を取り出すための電極部までキャリアが到達できず、電気エネルギーとしては利用できないということになる。

有機半導体の場合、シリコンなどの無機半導体と比べると、拡散長はかなり短くなる。シリコンでは原子が単純かつ周密な結晶構造のネットワークをもっているので、キャリアはそのネットワーク上を容易に移動できるが、有機半導体の構造は複雑であり、有機分子間の結合も弱く隙間があったりするため、キャリアが補足されやすいからである。

従来の有機太陽電池では、電子の拡散長は数百nm程度しかないとされてきた。今回の研究では、この拡散長をセンチメートルオーダーまで伸ばすことに成功したと報告している。

研究チームは当初、有機太陽電池の変換効率を上げるために、真空中での熱蒸発法によってフラーレン(炭素原子60個からなるサッカーボール状の分子)の薄膜層をpn接合層上に形成する実験を行っていた。フラーレン薄膜の上には電子の逃げ出しを防ぐためのブロック層をさらに形成した。

すると、このデバイス構造によって予想外に電子の拡散長が伸びる現象が見つかった。よく調べた結果、フラーレン薄膜が「エネルギー井戸」を形成することによって、電子と正孔の再結合を防ぐ効果があることがわかったという。論文によると、フラーレンのもつ高い拡散性と、電荷再結合までの時間が延びたことによって、3.5cm超という非常に長い拡散長が得られたとしている。

従来の有機太陽電池は、拡散長が短いためキャリア電子の生成ポイントであるpn接合界面近くを集電用の電極材料で覆わなければならず、デバイス形状と小型化に制約があった。拡散長を長く取れるようになれば、pn接合界面から離れたところに電極を作れるので、電極を極細の格子上に形成して窓用に利用可能な透明有機太陽電池なども実現できると考えられている。
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2018年01月27日

カーエレJAPANで多くのメーカーが車載用の有機ELディスプレイと照明を展示

〇2018年 1月 22日 UBIリサーチ

車載向けにOLEDディスプレイと照明の活用範囲が広がると予想される。

Samsung ElectronicsはCES 2018でOLEDを採用したインストルメントパネルを公開、LG Electronicsは14型台のOLEDを採用したセンターフェイシア(Center Fascia)を公開するなど、OLEDセットメーカーによる車載用OLEDアプリケーションの展示が続いて行われている。

17日東京ビッグサイトで開催された第10回国際カーエレクトロニクス技術展(カーエレJAPAN)においても、TianmaとTrulyを始めとする多くのメーカーが車載用OLEDディスプレイと照明を展示した。

Tianmaは4.2型、5.46型、5.99型OLEDパネルを展示した。5.99型OLEDはフルスクリーンタイプで、関係者は「視覚的な影響を大きく受ける車載用ディスプレイの特性上、フルスクリーンはモバイル機器のみならず、CIDとナビゲーションなど、車の内部にも採用される」と明らかにした。また、5.46型と4.2型OLEDパネルの輝度は650 cd/m2で、日差しの強い屋外でも視認性を確保しなければならないため、高い輝度のOLEDパネルを製造したと付け加えた。今回展示されたOLEDは全てリジッドタイプであるが、今後Unbreakable(割れない)フレキシブルタイプのOLEDも製造すると説明した。




Trulyは5.5型OLEDパネルを展示した。関係者は詳細仕様は公開できないが、現在車載用ディスプレイとして採用するためには、信頼性をの面でさらなる発展を遂げるべきだと語った。続いて、自律走行車のように車はこれから発展していく要素が多いだけに、視覚的な情報を提供できるディスプレイの重要性もますます増え、それに向けた投資も進められることを明らかにした。

最後にNippon Electric GlassはOLEDWorksと共同で製造したOLED照明を公開した。これについて、関係者は「車の室内照明と尾灯(テールライト)向けに製造した」と説明し、「OLED照明基板をIEL(Internal Extraction Layer)に用いることで、室内照明に採用すると効率向上、尾灯に採用すると視認性改善の効果がある」と述べた。




LG DisplayとOsramなどのOLED照明パネルメーカーは、Mercedes-BenzとBMWのような完成車メーカーに尾灯用OLED照明を納品したことがあり、特にLG Displayは昨年12月に第5世代OLED照明パネルの量産ラインが稼働を開始したことを発表するなど、OLED照明市場が本格的に開花すると期待されている。
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2018年01月16日

有機薄膜太陽電池の生産負荷を軽減、新しい高分子半導体の合成技術

1/16(火) スマートジャパン

 筑波大学と物質・材料研究機構(NIMS)の共同研究グループは2017年1月、有機電子光デバイス用高分子半導体を合成するための新しい合成技術の開発に成功したと発表した。従来よりも簡便なプロセスで高分子半導体を製造できるだけでなく、省資源・低環境負荷な生産も可能となるため、有機EL素子や有機薄膜太陽電池などの有機電子光デバイスの普及に広く貢献することが期待される。

 有機電子光デバイスを構成する材料の1つであるπ共役高分子は、これまで主に有機金属化合物と有機ハロゲン化物との遷移金属触媒を用いる「クロスカップリング反応」を利用して合成されてきた。この反応は多様な高分子合成を可能にする一方で、スズやホウ素、ハロゲンなどを官能基として利用するために、必然的にそれらの官能基を持つ原料(モノマー)を事前に合成する必要があった。さらに、これらの官能基に関連した副生成物を反応後に高分子から分離・除去しなくてはならなかった。

 同共同研究グループは、2種類の芳香族化合物のC-H結合を直接反応点として利用する原子効率の高いクロスカップリング反応を用いることにより、高分子半導体が得られるまでの合成ステップを2工程以上削減することを可能とした。さらに、酸素を最終酸化剤として利用することで、酸化剤の使用量を大幅に低減するとともに、この反応で生成する主な副生成物は無害な水になった。この反応では、異なる機能を有する2種類のモノマーを原料に用いると、それぞれの機能を併せ持つ高分子半導体が創出できる。

 今回は、電子輸送性モノマーと正孔輸送性のモノマーを重合することで、電子・正孔両電荷輸送性型の高分子半導体の開発に成功した。これを薄膜化してデバイスを作製したところ、電子、正孔が再結合して発光する有機EL素子の材料として機能することが確認できた。このように同反応は、さまざまな機能を有する高分子半導体を、従来の合成技術よりも省資源・低環境負荷で製造するプロセスを提供する。

 なお、この研究は、文部科学省科研費基盤研究の支援を受けて実施された。
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2017年02月20日

東レ、屋内センサー向け高効率有機薄膜太陽電池を開発

2017年2月15日
東レ株式会社

−IoT社会でキーとなる無線通信機器の電池交換レスを実現−

 東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、このたび、有機薄膜太陽電池モジュールを開発し、無線センサーに搭載して実証実験を行った結果、シリコンに代表される従来の無機系太陽電池では難しかった屋内の蛍光灯照明のような暗い環境においても安定に駆動する優れた性能を示すことを確認しました。無線通信ネットワークシステムにおいて不可欠となる自立型電源として、実用化に向け完成度を高めると共に、2019年近傍の事業化を目指し、ユーザー各社と連携して開発を加速して参ります。  

 現在、着実に進行しつつあるIoT社会においては、あらゆるモノを無線でつなぐための無線通信デバイスと、それを駆動するための電源が必要となります。従来のAC電源やバッテリーは、配線引き回しや電池交換の手間とコストがかかるため、将来的に年間1兆個以上も実装されると予測されている膨大な無線センサーの電源をこれらのみで賄うことは困難です。そこで、光があれば電気エネルギーを供給できる太陽電池が自立型電源として有力候補の一つとなりますが、現状のシリコンに代表される無機系太陽電池では、低照度における変換効率(光を電気に変えるエネルギー変換効率)が低いなどの課題が残されていました。

 これに対して東レは、単層素子としてすでに世界最高レベルの10%超(太陽光)〜20%超(屋内光)の変換効率を達成している有機薄膜太陽電池をベースに、高品質発電材料の合成技術や製膜溶媒の無塩素化など実用プロセスを構築し、無線センサー向けの有機薄膜太陽電池モジュールを開発しました。本開発品は、従来の屋内用アモルファスシリコン太陽電池モジュール(a-Si)に比べ、直射日光が当たらない低照度環境において最大で約2倍の発電量を実現しました。

 さらに、本開発品を搭載した無線センサーによる照明制御の実証試験を当社内で実施した結果、長期間安定して駆動するだけでなく、a-Siがデータ送信可能となる明るさの約1/2の明るさの下でも安定してデータ送信することが確認できました。

 本開発品は塗布プロセスで製造が可能であり、様々な形状の太陽電池が低コストで作製できることから、あらゆる場所に設置が想定される無線通信デバイスへの最適な電源になると期待されます。

 有機薄膜太陽電池は薄くて軽く、壁や窓、そして衣服など様々な場所に貼り付けることが可能です。これまで発電できなかったような屋内照明など微弱な光や、利用できなかった場所の光のエネルギーを集める技術はエネルギーハーベストと呼ばれ、無線通信デバイスの電源のみならず、医療などの分野においても大きな市場の形成が期待されています。

 なお、今回開発した有機薄膜太陽電池を搭載した無線センサーは、2月15日〜17日に、東京ビッグサイトで開催されるnano tech2017にて展示する予定です。

 東レは、創業以来の企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」を実現していくため、社会を本質的に変える革新素材の創出に取り組み続けて参ります。

 本研究の一部は、(独)日本学術振興会「最先端研究開発支援プログラム」継続研究2)の一環として実施されたものです。

【技術用語の説明】

1)有機薄膜太陽電池
様々な種類の太陽電池の中で、非常に薄く、簡便に作製できるため、軽量で柔軟性に富み、かつ、抜本的な低コスト化が可能な、次世代の太陽電池。発電層がシリコンや無機化合物からなる従来の太陽電池に対して、太陽光の吸収と電気の発生を有機化合物が担う。発電層の厚さがサブミクロン程度と非常に薄いことから、このように呼ばれる。

2)最先端研究開発支援プログラム「低炭素社会に資する有機系太陽電池の開発 光電変換材料開発による高効率・高耐久有機薄膜太陽電池」の継続研究(平成26年3月21日〜平成28年3月31日,研究支援担当機関:新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO))

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2016年05月18日

山形大学発のプリンテッドエレクトロニクス技術を事業展開するベンチャー企業設立

平成28年5月17日
山形大学
科学技術振興機構(JST)

山形大学 有機エレクトロニクス研究センター(ROEL)の時任静士教授と熊木大介准教授らは、科学技術振興機構(JST)の研究成果展開事業 大学発新産業創出プログラム(START)の支援により得られたプリンテッドエレクトロニクス注1)に関する研究開発成果をもとに、微細な印刷半導体回路注2)を実現する銀ナノ粒子インク注3)の開発・販売や、その応用製品であるフィルム型のセンサデバイスを試作・開発する「株式会社フューチャーインク」を設立しました。株式会社フューチャーインクでは、高性能な印刷半導体回路を形成する技術をコアテクノロジーとして、ヘルスケアセンサを始めとした高付加価値なプリンテッドデバイス注4)をより低コストで提供することで、だれもが快適で暮らしやすい社会の実現を目指します。

<企業概要>
社名:株式会社フューチャーインク(Future Ink Corporation)
設立日:平成28年4月1日
所在地:山形県米沢市城南4−3−16(山形大学 工学部キャンパス内)
資本金:1,000万円
役員:代表取締役社長 時任 静士、取締役副社長 熊木 大介、他4名

事業内容:
株式会社フューチャーインクは、山形大学 有機エレクトロニクス研究センターのプリンテッドエレクトロニクスに関する材料技術、プロセス技術、デバイス技術を事業展開し、高性能な印刷半導体回路を実現する「銀ナノ粒子インクの製造・販売」やこれを応用したヘルスケアや医療応用等に向けた「プリンテッドデバイスの試作・販売」を行っていきます(図1)。

プリンテッドデバイスは、薄いフィルム上に印刷プロセスで形成された電子デバイスで、人に貼って使うことや衣服として装着した際にも違和感が無いフィルム型のセンサデバイスを実現できるため、ヘルスケアや医療分野において今後ニーズが大きく拡大すると期待されています。

一般的に、センサの制御やセンサで得られた信号を処理して無線で情報送信するには、薄膜トランジスタ(TFT)注2)を多数組み込んだ半導体回路が不可欠となります。しかしながら、これまでのプリンテッドエレクトロニクス技術では、そのように複雑な印刷半導体回路を形成することが困難でした。

株式会社フューチャーインクでは、「低温」、「10μm以下の微細な線幅」、「高い歩留り」で半導体回路を形成できる優れた特徴をもつ銀ナノ粒子インクの開発に成功しています。また、ロール・ツー・ロール注5)印刷プロセスを使った大規模な半導体回路やセンサデバイスの製造技術の開発も進めており、プリンテッドエレクトロニクスの中でも特に、高性能な印刷半導体回路を形成する技術に強みを持っています。

この印刷半導体回路を中心としたプリンテッドデバイスの事業化を進めて、ヘルスケアセンサや大面積シート型センサ(図2)、電子ペーパーといった、高付加価値の新しい電子デバイス市場の開拓を目指します。

<研究開発の内容>
山形大学 有機エレクトロニクス研究センター(ROEL)の時任教授、熊木准教授の研究グループでは、全て印刷プロセスで形成したTFT回路の高性能化や、ロール・ツー・ロール方式のインクジェット印刷装置による大面積TFT回路の試作、タンパク質、アミノ酸、糖質などの生体を構成する材料を電気的にセンシングする有機TFT型バイオセンサの開発など、プリンテッドエレクトロニクスに関連した、材料、デバイス、プロセス技術を網羅する研究開発を進めています。

特にSTARTでは、印刷半導体回路の高性能化にフォーカスし、微細な配線を形成する印刷装置に適用可能な銀ナノ粒子インクの開発や、大規模な印刷装置に適用できる量への銀ナノ粒子インクの製造スケールアップ、それを用いたロール・ツー・ロール印刷プロセス開発に関する研究を進めてきました。 その結果、従来の技術では難しかった銀ナノ粒子インクの表面エネルギー注6)制御に成功し、従来のインクジェット印刷では難しかった線幅10μmよりも微細な配線を形成することに成功しました。また、銀ナノ粒子インクの製造量について、合成プロセスの最適化等により、ラボスケール(1g)からロール・ツー・ロールインクジェット印刷装置などが扱えるスケール(50g)へのスケールアップも達成しています。さらに、開発した銀ナノ粒子インクを用いて作製したTFTにおいて、センサを十分に駆動できる1cm2/Vsのホール移動度注7)が得られており、本技術で得られるTFTが実用に耐えうることを確認いたしました。これらの研究開発成果については、銀ナノ粒子インクに関する特許をはじめとして、フレキシブルデバイス注8)で重要となる電極密着性の向上技術に関する特許なども権利化しています。

<山形大学 有機エレクトロニクス研究センター(ROEL)について>
山形大学では、有機エレクトロニクス、プリンテッドエレクトロニクス、フレキシブルエレクトロニクスといった次世代エレクトロニクスをコアとする研究開発拠点事業を推進しています。拠点の中核となる有機エレクトロニクス研究センター(ROEL)では、次世代エレクトロニクスの開発を目的とする共同研究企業が50社以上集積していると同時に、数多くの海外研究機関とも連携しており、プリンテッドエレクトロニクスの世界的な研究拠点の1つとして注目されています。

今回の企業の設立は、以下の事業の研究開発成果によるものです。

研究成果展開事業 大学発新産業創出プログラム(START)
プロジェクト名 「微細印刷集積回路に向けた高精細、高機能な銀ナノ粒子インクの開発、製造・販売」
研究代表者 熊木 大介(山形大学 有機材料システム研究科 准教授)
事業プロモーターユニット 東北イノベーションキャピタル株式会社
研究開発期間 平成25〜27年度

STARTでは大学等の革新的技術の研究開発支援と、民間の事業化ノウハウを持った人材(事業プロモーター)ユニットを活用した事業育成を一体的に行い、企業価値の高い大学発ベンチャーの創出を目指しています(詳細情報:http://www.jst.go.jp/start/)。

STARTは平成24年度に大学発新産業創出拠点プロジェクトとして文部科学省により創設され、平成27年度からJSTに大学発新産業創出プログラムとして移管されました。


図1 株式会社フューチャーインクの事業イメージ


図2 90cm×60cmのPETフィルム上に、ロール・ツー・ロール方式のインクジェット印刷装置で
試作した大面積印刷回路(東レエンジニアリング株式会社との共同開発)

<用語解説>
注1) プリンテッドエレクトロニクス
印刷プロセスを用いて電子回路を形成する研究分野の総称で、特に小型・薄膜状の電子デバイスを大量に低コストで製造できる技術が産業的に非常に注目されています。
注2) 印刷半導体回路、薄膜トランジスタ(TFT)
印刷プロセスを使って形成された半導体回路で、センサの信号増幅回路や表示素子の駆動回路などに応用できます。半導体回路は、数百〜数万個の薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)で構成されています。TFTは複数の電極層や半導体層、絶縁層から成る積層構造であるため、印刷プロセスを使って高性能な半導体回路を形成するには、高精度な塗り分け(パターニング)など非常に高度な技術が必要とされます。
注3) 銀ナノ粒子インク
数ナノから数十ナノメートルの銀粒子を溶媒に分散させたインクで、印刷して配線を形成できる電極材料です。
注4) プリンテッドデバイス
印刷プロセスを使って作製された電子回路や電子デバイスを指します。
注5) ロール・ツー・ロール
ロール状に巻いたフィルムを巻き送り出しながら任意の加工(インクジェット印刷など)を施し、再びロール状に巻き取るプロセスです。低コスト化を実現できるフレキシブルデバイスの究極的な製造技術として期待されています。
注6) 表面エネルギー
固体表面(基板)に対する液体(インク)の濡れ広がりやすさの指標となる物性値です。銀ナノ粒子インクを濡れ広がりにくいインク特性に改良することで、より微細な配線を形成することが可能となります。
注7) ホール移動度
移動度は電荷(電子またはホール)が物質中を移動する際の移動のしやすさを表す物性値で、単位電場(V/cm)当たりの電荷の移動速度(cm/s)で表現し、半導体材料の電気的特性の優劣を示します。電子移動度とホール移動度の2種類ありますが、有機半導体を使った有機トランジスタでは、一般にホール移動度の方が高い移動度を示します。
注8) フレキシブルデバイス
柔らかく、曲げることができる電子回路や電子デバイスを指します。従来の硬い電子デバイスでは作れなかった円筒状に丸められる電子回路や、衣服にセンサ機能をもった電子デバイスなどが次世代技術として注目されています。
<お問い合わせ先>
<株式会社フューチャーインクに関すること>
熊木 大介
株式会社フューチャーインク
Tel:0238-26-3290 Fax:0238-26-3788
E-mail:

<START事業に関すること>
松村 郷史(マツムラ サトシ)、東出 学信(ヒガシデ タカノブ)
科学技術振興機構 産学連携展開部 START事業グループ
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
Tel:03-5214-7054 Fax:03-3238-5373

<報道担当>
山形大学 総務部総務課(広報室)
担当:菅井 久美子
〒990-8560 山形県山形市小白川町1−4−12
Tel:023-628-4008 Fax:023-628-4013

科学技術振興機構 広報課
〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
Tel:03-5214-8404 Fax:03-5214-8432
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2016年02月26日

東京化成 世界最小径のカーボンナノリング 有機電子材料に期待

2016年02月25日

 東京化成工業は、京都大学の山子茂教授と共同で、環サイズが世界最小のカーボンナノリングであるシクロパラフェニレン(CPP)を開発した。カーボンナノチューブ(CNT)の直径サイズを規定するパラフェニレン単位で、これまで最小とされてきた6を下回る5を実現した。フラーレンC60に似た電子物性を有していることから、有機エレクトロニクス分野の新素材としても有益としている。
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2016年02月05日

裏面照射を置き換える? パナソニックが有機薄膜とAPDのCMOSセンサーを発表

MONOist 2月4日(木)6時25分配信

裏面照射を置き換える? パナソニックが有機薄膜とAPDのCMOSセンサーを発表
CMOSセンサーの表面照射型と裏面照射型の構造比較


 パナソニックは2016年2月3日、半導体技術の国際学会「ISSCC(International Solid-State Circuits Conference)2016」で3つのCMOSセンサー技術を発表した。従来のCMOSセンサーに用いられているフォトダイオードを、有機薄膜やアバランシェフォトダイオード(APD)に置き換えることによって感度やダイナミックレンジを向上する技術になる。



●表面照射型から裏面照射型へ

 パナソニックの技術を説明する前に、まずはデジタルカメラやスマートフォンなどに広く採用されている裏面照射型CMOSセンサーの構造について説明しよう。

 裏面照射型CMOSセンサーは、撮像対象がある光の入射方向から見て、マイクロレンズ、カラーフィルタ、受光部以外の部分に光が入らないようにする金属シールド(遮光膜)、受光部となるシリコンフォトダイオード、半導体回路となる金属配線の順番に構成されている。

 裏面照射型CMOSセンサーが登場する以前の表面照射型CMOSセンサーは、シリコンフォトダイオードよりも金属配線が上層にあった。受光部であるシリコンフォトダイオードが金属配線による影響なしに光を効率よく取り込めることから、裏面照射型CMOSセンサーの需要は拡大している。デジタルカメラやスマートフォンのカメラでは既に裏面照射型CMOSセンサーが主流であり、現在は監視カメラなどの産業用途、自動車の運転支援システムなど車載用途にも広がりを見せている。

●フォトダイオードを光吸収係数が大きな有機薄膜に置き換え

 今回パナソニックが発表した有機薄膜CMOSセンサーは、従来のCMOSセンサーの受光部として利用されてきたシリコンフォトダイオードを、より光吸収係数が大きい有機薄膜に置き換えている。従来のシリコンフォトダイオードの場合、入射する光を電気信号に変換し切るために2〜3μm程度の厚みが必要だった。今回の有機薄膜は光吸収係数が大きいので、シリコンフォトダイオードの4分の1〜6分の1となる0.5μmの厚さで済む。なお、この有機薄膜は富士フイルムが提供した。

 このため、裏面照射型CMOSセンサーでも光線入射角が30〜40度だったところを、有機薄膜CMOSセンサーは60度まで拡大できる。そして、斜めから入射する光を効率よく利用するできるので、混色のない忠実な色再現性を可能になるとともにレンズの設計自由度が増し、カメラの高性能化や小型化につなげられる。

 また裏面照射型CMOSセンサーでは、遮光膜となる金属シールドを形成するために受光部分の面積が制限されるという課題があった。有機薄膜CMOSセンサーは、ほぼ全面に有機薄膜を形成できることから、裏面照射型CMOSセンサーに対して1.2倍の感度を実現でき、暗いところでもクリアな映像を得ることができるとしている。

 有機薄膜CMOSセンサーは、従来のCMOSセンサーと大きく異なる点がもう1つある。従来のCMOSセンサーは、シリコンフォトダイオードで、光を電気信号に変換する機能と信号電荷を蓄積する機能の両方を行っていた。これに対して有機薄膜CMOSセンサーは、有機薄膜で光を電気信号に変換し、信号電荷の蓄積は金属配線のさらに下層にある回路部で行う。

 光電変換を行う有機薄膜と、信号電荷の蓄積や電気信号の読み出しを行う回路部が分かれていることは新たなメリットを生み出す。有機薄膜を自由に選択すれば、波長や感度など、光電変換の特性を自由に設定できるし、回路部にはCMOSセンサーに求められる高速、広ダイナミックレンジ、高飽和といったような機能に対応する回路の集積も容易になる。



●明暗2つの感度検出セルで同時撮像、ダイナミックレンジは123dB

 この有機薄膜CMOSセンサーの基本的な特性を基に、パナソニックは2つの技術を発表した。1つは「ダイナミックレンジ123dBの明暗差を鮮明かつ時間ずれなく撮影を可能にする技術」。もう1つは「従来比約10倍の明るさまで忠実に画像を撮像できる高機能グローバルシャッタ技術」である。

 「ダイナミックレンジ123dBの明暗差を鮮明かつ時間ずれなく撮影を可能にする技術」では、回路部の構成を自由に設計できる利点を生かし、「高感度セル」と「高飽和セル」という2つの感度検出セルを1画素内に設けている。高感度セルは、高感度画素電極+小蓄積容量+容量結合型ノイズキャンセル構造で、高飽和セルは、低感度画素電極+大蓄積容量+従来型ノイズキャンセル構造となる。

 1画素内に明暗2つの感度検出セルを備えることにより、明るいシーンと暗いシーンを異なる構成のセルで同時に撮像できるので、1回の撮像で従来のCMOSセンサーよりも広いダイナミックレンジを確保できるという寸法だ。今回の技術を適用した有機薄膜CMOSセンサーの場合、従来のCMOSセンサーと比べて100倍となる123dBというダイナミックレンジを実現している。

 従来のCMOSセンサーで広いダイナミックレンジの撮像を行う場合、明るい画像と暗い画像を交互に撮像するマルチフレーム方式や、1枚の画像の中で明るいラインと暗いラインを交互に撮像するシングルフレーム方式などが用いられている。

 今回の有機薄膜CMOSセンサーでは、明るい状態と暗い状態を、交互ではなく同時に撮影している。このため、高精度な高速撮像や高速高精度な動体検出も可能になるという。

 また、高飽和セルでは、低感度の状態で、読み出し時間以外は常に信号電荷を蓄積している。車載カメラや業務放送用カメラでは、一定の周波数で点灯するLEDや蛍光灯による表示を正しく撮影できないLEDフリッカや蛍光灯フリッカという問題があった。高飽和セルであれば、これらのフリッカの影響が出にくい。

 有機薄膜CMOSセンサーは、有機薄膜と電荷蓄積部を金属配線で接続する構造なので、、蓄積電荷を完全に読み出すことができない。このため、画素(信号電荷蓄積ノード)リセット時のリセットノイズの影響を受けるという課題がある。高感度セルに採用した容量結合型ノイズキャンセル構造は、発生したリセットノイズ自体をキャンセルするためのものだ。

●グローバルシャッタ機能による飽和信号量は10倍に

 もう1つは「従来比約10倍の明るさまで忠実に画像を撮像できる高機能グローバルシャッタ技術」だ。グローバルシャッタとは、全画素同時タイミングで行うシャッタ動作のことで、画素1行ごとにシャッタ動作を行うローリングシャッタ動作がCMOSセンサーでは一般的である。

 CMOSセンサーのグローバルシャッタ機能は、各画素内にメモリを設けて、光電変換した信号を格納することで機能を実現していた。このため、画素内に追加したメモリ部が光電変換部面積を圧迫し、グローバルシャッタ機能を搭載すると飽和信号量が減少してしまうという課題があった。

 今回の有機薄膜CMOSセンサーでは、「光電変換制御シャッタ技術」でグローバルシャッタ機能の実現を図った。光電変換制御シャッタ技術は、有機薄膜に印加する電圧を調整して光電変換効率を制御するだけでシャッタ機能を実現できる。画素内に新たな素子追加をする必要がないので飽和信号量が減少することがない。

 さらに画素ゲイン切り替え回路による「高飽和画素技術」によって、従来のグローバルシャッタ機能を持つCMOSセンサーと比べて約10倍の飽和信号量も可能になった。もちろんローリングシャッタ動作もセンサー駆動の設定だけで切り替えられる

 この技術により、明暗差の大きいシーンで、画質劣化やシャッタ歪みのない画像を取得できるようになる。

 光電変換制御シャッタ技術と同様に、有機薄膜に印加する電圧や印加時間を変化させることで、感度を可変させながら多重露光撮像に応用できる「感度可変多重露光技術」も開発した。1回の撮像で動体速度に合わせた最適露光が得られることによる動体/文字認識や、時間に応じた感度濃淡を付けた撮像を行うことにより、動き検出時の進行方向情報の取得が可能になる。動体検知や動き方向のセンシングなどに展開したい考えだ。

●アバランシェフォトダイオードで光電子を1万倍に増倍

 今回は、有機薄膜センサーの他に、受光部のフォトダイオードにAPDを導入したAPD-CMOSセンサーも発表している。こちらの開発は、パナソニックのオートモーティブ&インダストリアルシステムズ社が担当した。

 従来のCMOSセンサーでは、光電変換によって生成される光電子は、撮像時の明るさに比例する。暗い場所では発生する光電子が少ないので、ノイズレベルに近くなって鮮明な撮像ができなかった。そこで、光電変換で生成された光電子を増倍させるために、微弱な光(少ない光子量)から大きな電気信号を取り出せるAPDを設け、増倍された多量の光電子を蓄積領域に蓄積できるようにした。APDの導入により、暗い場所の少量の光電子を1万倍に増倍できる。APDによる光電子の増倍は、カラーフィルタを透過した色情報を持つ光電子にも適用されるため、APD-CMOSセンサーであれば暗い場所でも高感度で撮像可能だ。パナソニックでは、星明かり程度の照度(0.01ルクス)で、高感度のカラー撮像を確認している。

 また、APDへの印加電圧を制御すれば、光電子の増倍を制御できる。明るい場所では光電子をそのまま、暗い場所では光電子を1万倍に増倍して出力することができ、さらには明るさに応じて感度を可変して、星明かりと街灯が混在する明暗差の大きいシーンの鮮明な撮像も可能になる。
posted by 新照明の情報2008 at 06:42| 有機エレクトロニクス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする